着色は、木材に色彩を与えて木理の美しさ、木材固有の色を更に美しく引き出し、価値を高めることを目的としています。
すなわち、材固有の色を強調させたり、色調を均一にするなどの着色方法によって、木材の木目や模様などの特徴を強調させたり、均一にする。
例えば、低級材を高級材のように表現したり、心材と辺材の色の差をなくし均一な色にする技法もその一つです。
<木材の色を基調にしたもの>
・ナチュラル塗装
透明塗料だけで仕上げます。この場合は、一般的に塗料により漏れ色が出ます。
同じナチュラル系でもこれとは別に専用の塗料を用いることで無塗装の触感に仕上げる白木仕上げ(木地仕上げ)塗装もあります。
・着色塗装
安い木材を高級材の色に着色するか、木材の色をさらに着色によって強調します。
・アンティック塗装
古典家具を強調するため、例えば彫刻の凹凸部分などに色の濃淡をつけ、使い古した感じに表現するものです。
<色彩を主体にしたもの>
・エナメル塗装
素地を隠ペイした、不透明の平滑仕上げです。
・半透明塗装
顔料を使用した目止着色と、不透明のエナメルをクリヤーで薄めた塗料で半透明に仕上げます。
・変わり塗り塗装
塗装で大理石模様や皮革や布地の感じを表現した塗料です。
(1) 素地着色法……木質感を活かす、または強調しながら美しく色どるために用いられる方法。
a) 染料着色剤
染料着色剤には植物性染料・塩基性染料・酸性染料・直接染料などを水に溶かした水溶性染料着色剤、石油系溶剤に溶かした油溶性染料着色剤アルコール溶性染
料をメタノールとやエタノールのアルコールに溶かしたアルコール性着色剤、酸性染料をメタノールとグリコールエーテル系の高沸点溶剤に溶解したNGRステ
インなどがあげられますが、水系は素地ケバ立ちを起こしやすく、溶剤系およびアルコール系のものは耐光性が悪く、ニジミも起こしやすい。これらのことを考
えると、染料系素地着色剤として最も良いと思われるのはNGRステイン系素地着色剤でしょう。
染料系素地着色剤は、一般には材色を補色するため、均一に素材に吹き付けるのが普通の使い方ですが、場合によっては素材の吸い込みムラを強調して、刷毛塗
りやディッピングを行うこともあります。ブナ材に対するコロニアル調、カエデ材・カツラ材に対する民芸品調などは、この代表的なものです。
だが、いずれの 染料着色剤もデリケートな性格を持っているため、現状では比較的安定性の良い顔料着色剤の方が多く扱われています。
b)顔料着色剤
顔料系着色剤には超微粒子顔料を水系分散剤が含まれた水に混入した水性顔料着色剤と、展色剤としての樹脂に顔料を練り込み、それを溶剤に溶かした溶剤系顔
料着色剤があります。さらに溶剤系顔料着色剤には展色剤と着色顔料だけのものと、展色剤に着色料および体質顔料とが混入されたものがあります。
体質顔料の入らない顔料着色剤は、顔料に混入して塗膜着色を行ったり、ワイピングステインに添加して色の濃度を調整したりすることが可能です。
本来、顔料系は染料系に比べ、発色がにぶい性格をもっていますが、超微粒子化することで発色の鮮明度を向上させるなど、実用レベルでは差を感じないようになっています。また、紫外線に対する抵抗力は染料系よりも優れています。
c)薬品着色剤
薬品着色剤は酸、アルカリ、塩類の水溶液を木材に塗布し、木材中に含有するタンニン酸やフェノール性物質などの成分と化学反応を起こさせて発色させる方法
があります。一般の着色剤と異なるところは、同一木材であっても木材の部分によって含まれる成分やその含有量が違うため発色の程度が異なることです。ま
た、普通の着色剤では組織の綿密な秋材部分や随線部分が着色しにくいのに反し、薬品着色はむしろ、そのような部分が濃く着色される傾向にあるという点があ
げられます。
それゆえ、色そのものは普通の着色剤の調色で表現が可能であったとしても、その仕上がり効果は全くの別物であると考えなければなりません。ナラ材に対する
アンモニアスモーク法による随膜の強調、針葉樹に対する神代色仕上げの秋材部分の強調などは、一般の着色剤ではどうしても不可能な表現です。
(2)
塗膜着色法……素地着色の補正や塗色全体に深みをもたせるなどのために用いられる方法。
塗膜着色はクリヤー塗料の中に染料や顔料などの有色剤を混入し、スプレーなどを使用して、被塗物全体に目的の色が得られるように均一に塗装する方法です。
多くの場合、中塗り後・上塗り前の間で行う作業なので、木地の吸い込みの影響を受けずに均一な着色が可能になります。本物志向が望まれるようになると素地
着色にウェイトがかけられるようになり、塗膜着色は材色を補色する程度の意味合いに変化していきました。しかし、最近の状況は良材の入手が難しくなるにし
たがって、塗膜着色にウェイトがかかってきています。
木材を着色する目的は、木材自身の持つ自然美を更に強調させることがありますが、その他にも異種材を同一色にするとか、低級材を高級材に見せる目的で着色することもあります。
着色剤は染料・顔料・化学薬品の3つに大別できます。
染料・顔料はそれ自身が呈色するのに対し、化学薬品は木材の成分と反応して呈色します。しかし、化学薬品による着色は難易度や使用頻度から考えても実用レベルとはいい難いので、ここでの解説は割愛します。
(1) 染料系……溶剤に溶ける、浸透性・透明性・鮮明さに優れる、耐候性・ブリード(にじみ出し)性劣る。
動物性の色素が天然系染料として昔から使用されてきましたが、19世紀の半ばにアニリン合成を契機として合成染料が主流となり、今日、市販染料は7000種にも達しています。分子中に必ず芳香環を含むほか、発色を強めたり、溶解性が染着力を高める基を含むことが多いといえます。
その性質から染料は10余りのグループに分類できますが、このうち木材の着色には塩基性・酸性・直接の染料群が用いられています。
○塩基性染料
水溶液としたとき、発色団が陽イオンとなるものをいいます。
塩基性を示すのは分子中に窒素原子が含まれているためです。また、鮮明な着色となるが耐光性はあまり高くないので、長時間使用する製品の着色には向いていません。
○直接染料
セルロース繊維に対し、媒染によらないで直接染着する性質を持つアゾ化合物です。透明性はやや劣りますが、耐光性が良い。ダイレクトブラウンがこれに属します。
○酸性染料
分子構造の中にスルフォン基やカルボキシル基など、酸性基を持つ染料のことです。
分子量が比較的小さく、鮮明性と染着力の高いものが多い。水溶液のほか、有機溶剤に溶かした形でも用いられます
。
(2)
顔料系……溶剤に不溶、耐光性・ブリード性に優れる、浸透性・透明性・鮮明さに劣る。
顔料は一般に水など、その他の溶媒にも非常に溶け難くく、物理・科学的に安定している。人類は昔から天然の有色鉱物を砕いて使用してきたが、19世紀後半
以後、合成顔料の時代へと推移し、今日に至っています。顔料は有彩・無彩のものがあり、例えば体質・充填剤的なものまで含む微粉体のことを指します。
○塗料用顔料の種類
塗料は目的とする機能、あるは要求される性状などにより、種々の顔料が使い分けされている。
塗料用に使用されている顔料は、大別して無機顔料と有機顔料の二種類でこれらが単独あるいは種々の組み合わせによって使用されている。
┌ 着色顔料
┌ 無機顔料 ┼ 体質顔料
│ ├ 防錆顔料
塗料用顔料 ┤ └ 金属粉顔料
│
└ 有機顔料 ─ 着色顔料
無機顔料 |
天然または合成によって作られる無機化合物であって、着色顔料に限っていえば、一般に隠ペイ力が大きく、熱や薬品あるいは光に対して安定している。有機顔料に比べて色数が少なく、着色力が小さく、色の鮮明なものが少ない。コストは比較的安価です。 |
有機顔料 |
一般に隠ペイ力、耐光性、耐溶剤性、耐熱性などが無機顔料に比べて劣るものが多い。 しかし、色数は豊富で、着色力が大きく、色の鮮明な顔料が多いという特徴をもっています。 |
有機・無機顔料の性能比較
\性能 顔料 |
色 | 色数 | 着色力 | 隠ペイ性 | 耐熱性 | 耐薬品性 | 耐光性 | 耐溶剤性 | コスト |
無 機 | 不透明 | 貧 弱 | 小 | 不透明 | 大 | 中〜大 | 中〜大 | 大 | 安 価 |
有 機 | 鮮 明 | 豊 富 | 大 | 透 明 | 中〜小 | 中〜小 | 中〜小 | 中〜小 | 高 価 |
下記条件を目安に、目的に応じた着色剤を選定します。
1. | 耐光性に優れていること (長期間の使用に耐えなければならないから当然) |
2. | 浸透性に優れていること (透明着色塗装が木質感の美しい表現を主眼としているならば、塗装した色が木材そのものの色であるかのように見せたい。 そのためには、木材内部から発色してることが必要となる) |
3. | 木質感を得られること |
4. | 着色方法が簡単なこと |
5. | 着色ムラがないこと |
6. | 次工程への影響がないこと(硬化、ニジミ、変色) |