木部住宅で新中古建築中に床柱、柱、鴨居などの木材に壁剤、漆喰、セメント、手アカ、油アカ、金物の錆などが付着して経時的に、その汚染が鮮明に出てくることが多いようです。ここでは、これらの汚染処理の薬剤とその方法について、簡単に述べてみます。
注意
以下に記述する内容は、木材の汚染処理方法の一部を掲載しているに過ぎず、汚染が必ず処理(解消)される方法という訳ではありません。
また、処理には一般に入手困難な薬剤を使用するケースが多く、その取り扱いにも専門性が要求されます。
さらに、下記薬品類は、取り扱いを間違えると大切な財産である木製品や建造物に損害を与えるばかりでなく、取扱者の健康に著しいダメージを与えることになります。
汚染処理効果確認のための試用も含めて、汚染処理作業の一切は、必ず専門業者に依頼して下さい。
大部分の樹脂は5×10-6%の鉄イオンでさえ、わずかな汚染を起こし、ヒノキ、キリ、などは1×10-6%で認められる。木製建材の製造および現場施工で発生する汚染の多くは鉄汚染・ついで酸汚染が多く、アルカリ汚染は少ない。
鉄汚染の発生は水分の存在下で鉄分との接触により木材中のタンニンやフェノール性成分と鉄イオンが反応して、タンニン鉄化合物、フェノール鉄などの化合物が出来、一般に青黒く時間の経過とともに除去し難くなる。
●著しく鉄汚染される樹種
広葉樹…ミズナラ(心材・辺材)、サワグルミ、イタヤカエデ、ブラックウォールナット
針葉樹…ベイマツ(やや強いもの)、スギ心材、ベイヒ辺材
●鉄汚染の程度の弱い樹種
広葉樹…チーク、ホオ辺材、ヤチダモ
針葉樹…スギ辺材、ヒノキ、キリ
◎除去処方例
・鉄汚染を再発しない処理法
シュウ酸4%液で除去後、第1リン酸ナトリウム7%液で再処理
・除去し難い鉄汚染処理液調整
次亜リン酸(市販品50%)8g
次亜リン酸ナトリウム 2g
重亜硫酸酸ナトリウム 0.1g
水 90gに溶解して調整
・浄化水素酸漂白剤
ミズナラに良く見られる加工機機械の鉄とタンニン酸による鉄汚染の除去に有効。
木材は酸により、しばしばシミになり紫外線により呈色が著しくなる。
化粧合板製造時の酸性接着剤や、鉄汚染除去法としてのシュウ酸処理後の水洗不十分などが汚染の要因としてあげられる。
◎除去処方例
・過酸化水素2〜10%液体にアンモニア水添加(PH7〜8)
・亜塩酸ナトリウム0.2〜2.0%液を微アルカリ性で使用
・水素化ホウ素ナトリウム0.1〜1.0を弱アルカリ性で使用(除去し難い汚染に有効 )
家具類の着色にアンモニアガスや消石灰が用いられ薬品着色として発色に有効であるように、木材はアルカリにより汚染され、淡褐色などに変色し、PH11に
なると急激に変化する。要因は、木材中のフェノール成分がアルカリによりフェノラートイオンとなり酸化重合されると考えられている。
◎除去処方例
・2%過酸化水素液(10%以上になると漂白される。)
・1%シュウ酸水溶液(濃度を高くすると酸汚染される。)
●スギ黒心の漂白 | ・過酸化水素 ・亜塩素酸ナトリウム ・リン酸系による淡色化 |
●ベイスギ材の漂白調色 | ・過酸化ベンゾイル |
●カラマツ材色の改良 | ・35%過酸化水素と無水酢酸1:3の混合液浸漬 ・セミカルバジド |
●銘木不良材の改良 | ・ヒドラジン |
<酸化漂白剤>
・無機塩素系 | 亜塩素酸ナトリウム(NaClO2) 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO2) 次亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)2) 二酸化塩素(ClO)2 |
・有機塩素系 | 塩素化イソシアヌール酸塩 クロラミンB、クロラミンT |
・無機過酸化物系 | 過酸化水素(H2O2) 過酸化水素ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム 過酸化尿素、過炭酸ナトリウム |
・有機過酸化物系 | 過酸化ペンゾイル、MEKPO、TBHPO 過酢酸、過ギ酸 |
<還元漂白剤>
・水素化化合物 | 水素化ホウ素ナトリウム(耐光性付与・高値 ) |
・含窒素化合物 | ヒドラジン(NH2−NH2) セミカルバジド(H2NCONH・NH) |
・無機硫黄化合物 | 次亜塩酸ナトリウム(Na2S2O4) 亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5) 亜塩酸水素ナトリウム ロンガリット 二酸化硫黄(SO2) |
・有機硫黄化合物 | トルエンンスルフォン酸 メチオニン システイン シュウ酸(COOH)2 沸化水素酸 アスコルビン酸化 次亜リン酸 |
<その他の薬剤>
・その他 | ポリエチレングリコール ポリエチレングリコールメタクリレート ポリビニルアルコール |